頭痛が頭痛のタネ

はじめに

現在、日本で頭痛に悩んでいる人は約2000万人いるといわれています。その頭痛の原因としては、よく知られている片頭痛をはじめいろいろなものがあります。

そのいろいろな頭痛の中でも最も多くみられるタイプは片頭痛ではなく、“緊張型頭痛”と呼ばれるものです。この緊張というのは『人前で緊張する…』という場合の精神的な緊張ではなくて“筋肉が凝(こ)る”こと、つまり“筋肉が緊張する”ことを意味します。頭痛を訴えられて来院する成人の患者様の約70~80%はこの緊張型頭痛です。ところが、実際にはこれがなかなか頑固で一筋縄ではいかないことも多く、患者様の中には『いろんな病院で頭の検査を受けたが異常ないと言われるだけで、ちっとも頭痛が良くならない』と悩まれている方も少なくありません。

つまり、『頭痛が頭痛のタネ』ということになりかねないのです。今回はこの緊張型頭痛について少し御説明します。

緊張型頭痛の特徴

この頭痛はわかりやすく言うと、首・肩の筋肉の凝りからくる“神経痛”のことです。つまり、首や肩、背中の筋肉が何らかの原因で硬く突っ張ってくると、その筋肉の中や周囲を走る神経が締めつけられて頭痛をきたすようになります。
その特徴としては、次のことが挙げられます。

  1. 首・肩の凝りを伴い、後頭部から頭頂部、前額部(ひたい)にかけて締めつけられるような鈍い痛みや不快感が長期間続く。
  2. 後頭部、首、肩、目の上を押さえると、強い痛みが走るポイント、これを圧痛点と呼びますが、これが認められる。
  3. 頑固で不愉快な眩暈(めまい)を伴うことが多い。この眩暈(めまい)は頭の位置を変換することに関係なく、座っていてもゆっくり歩いている時にも船や雲の上を歩いているようなフワフワ感が続く。
  4. 不眠や仕事の疲れなど、精神的・肉体的なストレスで頭痛が強くなる。また、雨降りの前の曇りの日や季節の変わり目など、天候の変化に影響されやすい。
  5. 高齢の方の場合は頚椎(首の骨)の変形や不安定を伴うことがある。
  6. 首の寝違いや追突事故による鞭打ち症などによって起こることがある。

この様な性質を持つ頭痛が緊張型頭痛です。
それではどうすればいいのかというと、

日常生活での予防

  1. 首や肩の筋肉はできるだけ冷やさないことが大切です。冷たい氷を首や肩に直接当てたり、クーラーや扇風機で長時間冷やしたりすることは避けたほうが無難です。逆に凝ってる筋肉をお風呂の中や蒸しタオルなどでゆっくり温めてマッサージをしてほぐすことで頭痛が緩和されます。
  2. 仕事で長時間コンピュータ-の操作をする場合や車を長時間運転する時は、途中で休憩し首・肩のストレッチ運動などをして、緊張した筋肉をやわらげることが必要です。
  3. 高くて硬い枕はなるべく避けて、自分に合った低くて柔らかい枕を試みてください。また、首・肩に負担のかかるような無理な姿勢で眠らないことも大事です。眼鏡もやはり自分に合ったものをかけて、眼に負担をかけないようにしましょう。
  4. できるだけ規則正しい生活を心がけることが必要です。
    これらをチェックして思い当たることがあれば、是非工夫してみてください。
    日常生活の予防を行っても頭痛が改善されない場合は頭痛の専門病院での治療が必要になります。

治療方法

  1. まず、第一選択は鎮痛剤や筋肉をやわらげる薬などの内服を試みることです。ただし、鎮痛剤を長く服用すると、胃炎・胃潰瘍などの合併症をきたすことがあるので、長期の服用は避けなければなりません。
  2. 普段より胃腸が弱く鎮痛剤の服用ができない方や頭痛が強く鎮痛剤があまり効かない場合には神経ブロックといって、緊張型頭痛の原因になっている神経や筋肉に直接局所麻酔剤を注射して痛みをとる方法があります。この方法は非常に効果がありますが、残念ながらその鎮痛効果は一時的で約2~5日間です。したがって頑固な頭痛を充分改善させるまでには、何度か神経ブロックを繰り返し行う必要があります。この神経ブロックは安全に行うことができ、劇的な効果が期待できる有用な方法です。
  3. ホットパックなどの温熱療法やマッサージ、鍼灸療法なども有効なことがあります。

まとめ

この様ないろいろな予防法・治療法を行うとほとんどの緊張型頭痛は改善することが多いのですが、やはり中には頑固な頭痛や眩暈(めまい)がなかなか軽減せず悩んでいる患者様も少なくありません。しかも、残念ながら自分以外の人には、いくら説明しても頭痛は伝わりません。頭痛が長期になればなるほど、友人・同僚、ましてや家族からも理解してもらえず、『気のせいでは…』などと言われて独りで落ち込んでしまって、そのあげくノイローゼやうつ状態になるケースも決して少なくありません。

『頭痛が頭痛のタネ』と独りで悩んでおられる方、“仕方ない”とあきらめる前に、一度一緒に頑張ってみませんか。

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